From Slaying Metal Slimes to Being Called the King of Black Steel e RAW novel - Chapter (406)
第403話 試してみたいこと
悠真は魔力を全開にしてオーガに突っ込む。
周囲に展開した”風の龍”と”雷の龍”は悠真に追従し、大口を開けてオーガに向かっていく。
「行けっ!!」
風の龍はオーガの右腕に食らいつき、引きちぎって空に昇る。雷の龍もオーガの左腕に襲いかかった。
二
本
の
左
腕
が吹っ飛び、稲妻が辺りに飛散する。眩い光の中を悠真が駆け抜ける。
ピッケルに火の魔力を宿し、相手の腹に叩きつけた。爆発して炎上――オーガの腹は痛々しく
抉
れている。
「喰らいやがれ!!」
左肩のキャノン砲から火炎が放射され、オーガの全身を飲み込む。
「がああああああああああああああああ!!」
炎に巻かれながら、オーガは踏鞴を踏む。悠真は左肩の砲塔を相手の向けた。水が放射され、オーガの左足に当たる。
水はグルグルと足に巻き付き、そのまま凍ってしまう。
オーガは「がっ!?」と呻き、完全に動けなくなった。
その隙に”風の龍”がオーガの背後から襲いかかる。背にぶつかると膨張して弾け、風の刃を無数に生み出す。
オーガの背中はズタズタに斬り裂かれ、鮮血が飛び散る。
痛みに顔を歪めたオーガは後ろを振り向いた。その一瞬を悠真は見逃さない。
一気に踏み込み、雷を流し込んだピッケルを全力で振るった。
オーガに当たった瞬間、激しい稲妻が光の柱になって天に昇る。粉塵が舞い、地面には大穴が空いていた。
悠真が見上げる先には、左半身が焼けただれているオーガが立ち尽くしている。
「さすがに効いてるな」
悠真は後ろに飛び退き、スタンスを広げて構えを取る。
畳みかけてここで決める!
右肩の砲塔から連続で『火球』が発射された。三発の火球は次々に着弾、オーガは爆発・炎上していく。
悠真はさらなる攻撃を仕掛ける。左肩のキャノン砲をオーガに向け、鋭い『氷塊』を撃ち出した。
先の尖った氷塊は、オーガの胸に突き刺さった。オーガは唸りながら一歩、二歩と後ろに下がっていく。
刺さった氷塊から冷気が流れ出し、オーガの体を凍らせていく。
動きの鈍った相手を見て、悠真は
止
めを刺すために走り出した。手に持ったピッケルに『液体金属』を流し込み、巨大なハンマーに変えていく。
地面を蹴って飛び上がり、ハンマーを振り上げた。
ヘッドの部分から稲妻がほとばしり、莫大な魔力が集まり出す。オーガの目に恐怖の色が浮かんでいた。
「終わりだ」
ハンマーは落雷の如くオーガの頭に落ちた。魔物の頭部は消し飛び、ハンマーは胴体にもめり込む。
稲妻が渦巻き、オーガの体を焼いていく。さすがに再生はできず、体はボロボロと崩れていった。
砂に変わるオーガを
眺
めたあと、悠真は
踵
を返して歩き出す。『金属化』が解け、元の姿に戻った悠真は秋山たちと合流した。
秋山は戸惑いつつも、悠真に話しかける。
「本当に……【迷宮の支配者】を倒したんですね」
「ああ、もうすぐここも崩れると思うよ」
あっけらかんと答える悠真に、北沢が詰め寄る。
「じゃ、じゃあ、早く脱出しないと!」
慌てる北沢に同調するように、大浦も「うんうん」と大きく首を縦に振る。
「もちろん。でも、その前に試したいことがあるんだ」
「試したいこと?」
秋山が眉間にしわを寄せる。悠真はもう一度『金属化』を発動した。
また”黒鎧”となった悠真に、秋山たちは「うっ」と唸ってあとずさる。やはり見た目が怖いのだろう。
悠真は右手の甲に意識を向ける。宝玉の一つに集中すると白い光が溢れ出した。
渦巻く光が悠真を包み込むと、次の瞬間――巨大な白いオーガが立っていた。
二本の角が生えた眼光鋭い鬼。筋骨隆々の体と野太い腕がこの魔物の強さを語っている。秋山たちはなにが起きたのか分からず、ただただ唖然とするばかり。
数秒経ったのち、北沢が悲鳴を上げる。
大浦に至っては涙目になって尻もちをついていた。
「あ、ごめん、ごめん。突然変身してビックリしたよね。おれおれ、三鷹だからそんなに怖がらなくていいよ」
巨大なオーガは頭をポリポリと掻きながら謝ってくる。秋山たちは呆然としたまま、ポッカリと口を開けていた。
悠真は自分の両手に視線を向ける。
このオーガ。【迷宮の支配者】の体なら、より高度な魔法――第五階層の白魔法が使えそうだった。悠真は自分の感覚を信じ、右手を高くかかげる。
手の平を空に向け、白の魔力を集めていく。すると空がぼんやりと輝き出し、光が円を描いて広がっていったのだ。
それはさながら
巨
大
な
光
輪
。天使の輪っかにも似た光に、地上にいた秋山たちも目を見開き、見とれているようだった。
だが、悠真だけは危機感を覚える。
「これは……」
それが一体どんな魔法か――。悠真はオーガに変身することで、その全貌を理解することができた。
◇◇◇
イスラエル・白のダンジョン【オルフェウス】――
大規模な攻略隊は、深層の二百五十階層に足を踏み入れていた。
ここまでに多くの『天使』と戦い、死者七十人、重傷者百二十人ほどを出していたが、千人以上の
探索者
は攻略を継続していた。
これは異例の数字であり、攻略が順調に進んでいることを意味する。
隊のリーダーであるロレンゾは、現状に手応えを感じていた。
――このまま行けば最下層まで辿り着けるだろう。そして攻略も充分可能だ。
隊の先頭を行くロレンゾは、丘向こう目を向ける。そこには光が溢れていた。よく見れば、恐ろしい数の天使が空に昇っていく。
天使は空で渦巻き、巨大な球体を作り出す。
「なんだ? あれは……」
ロレンゾは眉間にしわを寄せる。光の球体はぶわりと飛散し、中からなにかが出てきた。
それは誰も見たことのない、巨大な天使の魔物だった。