Yumemiru Danshi wa Genjitsushugisha RAW - chapter (115)
このタイミングで
廊下を甲斐先輩と歩く。方向が途中までカブるせいで手伝わされたんだろうし、俺としては申し訳無さを感じる………ちょっと待って冷静に考えたら手伝わされてんの俺じゃね?なに申し訳無さ感じちゃってんのヤバい、今なら就活できそう。いやいや何でこんなポジティブになれんの……?アレか、夏川追い掛けてた時の癖か?意外と良い側面も有るもんだな……。そんだけポジティブなのに夏川に対しては自信持てないっつーのは何の呪いなの?
「佐城君とこうして歩くのも一学期以来ですか」
「ああ、あの時の……」
あの時はその直後がヤバかったな……二度と生徒会に関わるまいなんて思ってたのに……何でこんな事になってんだか。まあ家に帰ればその副会長様が居るからな。否応無しなんかねコレ……。
「ふう……中々体力使いますね」
「ああ、ダンボールに腹くっつけると軽く感じるっすよ。引越し屋の手法です」
「ふふ……」
「……何すか」
「いえ、つくづく佐城君は生徒会に向いてるなと思いまして」
「やめてくださいよ」
この人も俺が生徒会に入んの賛成派なのか。ちょっと警戒心湧いたな。策巡らす感じの性格してそうだし、あんまり俺自身のこと喋んないようにしよ……。
「そういや、そーゆー先輩は生徒会続けないんすか?何か風の噂でそう聞きましたけど」
「噂になってるんですか……何だか嫌ですね」
「気持ちは察しますけど」
誰に聞いたんだっけ?忘れたわ。生徒会で考えると影薄い感じだけど、二年の間じゃ結構有名らしいからな。主にイケメンだとか眼鏡だとかそっちの方向で。本体はそっちか。
「生徒会が嫌なワケじゃないんですよ。生徒会長が嫌なんです」
「あぁ……意味
解
りましたわ……もしかして、姉貴からも?」
生徒会を続けようもんなら『え?じゃあ生徒会長やるよね?』って空気感が間違い無く出来上がりそうだ。姉貴にお願いとかされなかったのかな……K4───や、コレ勝手に俺がそう呼んでるだけなんだけど、その一員なら姉貴に頼まれたらころっと頷きそうなもんだけどな。
「打診はされましたが流石に……まぁ、直ぐに引いてくれたんで良かったです」
「……すみませんねうちの姉貴が。俺には日頃食い下がるどころか命令なんですけど」
どうやら甲斐先輩の触れて欲しくない部分だったらしい。先輩が生徒会長にならないっつって俺から『え?ならないんすか?』なんて言おうもんなら不機嫌になってたかもしれない……危ねぇ危ねぇ。絶対キレたら怖いもんこの人。
「命令………コホン。と、ところでですね佐城君」
「はい?」
「その、か、楓さんなんですけど……家ではどのような感じなんでしょうか?」
「はい?」
思わず同じ返事を繰り返してしまった。質問の意味が解らない。や、ホントは解るんだけど。ちょっと甲斐先輩にそういう変態的なイメージが湧かない。何この話題、掘り下げたくねぇ……。
「”どのような感じ”ってのは……?」
「へっ……!?そ、そのですね……えっと、アレですよ、お
家
で佐城君の前じゃどんなふうに過ごされてるのかな、なんて……」
おい何だ、何だこれ。あれか?今俺は甲斐先輩の性癖に付き合わされてんのか。何で実の姉使って余所の男喜ばせなきゃなんねぇんだよ。
や、まぁ、んぅ……。甲斐先輩には世話になってっかんなぁ……ホントは俺を面倒事に巻き込んだ一人なんだけど、それでもすげぇ親切にしてくれっかんなぁ……。橋本かーんなっ。
「実はですね……」
「じ、実は……?」
「姉貴は、
肌着
族です」
「は、肌着族……!?」
ちょ、あんまデカい声で叫ばないでくんねぇかな。すれ違う人から怪訝な顔向けられるんだけど……!小声。そう、小声で話そう。そしたら先輩も俺の意図汲んでくれんだろ。
「姉貴は家に帰ったら脱ぎ散らかすんです。俺がソファーを占領してようもんならスカートとかシャツ放って来ますね……」
「す、スカートを!」
「声が大きいっ」
「あっ、ご、ゴホン。それで……?続きを聴きましょうか」
ヤバい甲斐先輩のイメージが。そんな鼻息荒くするとこ見たくなかった。この人意外とオープンなのな……もしかして俺が姉貴の弟だから?や、普通隠すよねそーゆーとこ。あれか、無意識になっちゃってる感じか。夏川を前にした俺こんなんなの?
「今の季節は基本キャミソール姿っすね……さすがに下はパンツじゃなくて短パン───や、親父が居ないってわかってたらパンツかもしんないっす」
「キャミソール……!?パンツ……!?佐城君の前でですか!?」
「ちょっ、影作んないでくんないっすか。単に男として見られてないだけなんで。てか俺も小さい頃から見慣れたもんですし。何なら俺が小学生の頃は完全裸族っすよ」
「か、完全裸族っ……!」
しまった……!何だかよくわかんねぇパワーワードを生み出してしまった……!甲斐先輩の顔がヤバい、鼻血出しても違和感ねぇぞ。や、常識的に考えて違和感の塊なんだけど。これ小声でもヤベぇなっ……クラスの連中に聞かれたら俺の色んなもんが終わる気がする……!
「か、楓さんがそんな格好を……っ…………」
「や、そんな色っぽいもんっすかね。あんな格好でも普通に足蹴りして来ますからね」
「足蹴りッ……ですか」
「足蹴り、すけど……」
ちょっと?今何か一瞬すっごい反応しなかった?謎の力強さ感じたんですけど。気のせい?気のせいだよな。気のせいっつー事にしとこう。甲斐先輩のためにも。俺のためにも。
「他にはどんなっ……」
うっそん。
ええ……掘り下げんの?姉貴のその部分聞きたい感じ?どんだけ姉貴が普段家で
痴態
晒してるか教えてやろうと思ったのに急に喋んの恥ずかしくなってきたんだけど。身内の恥晒すとかそんなもんじゃねぇな……姉貴を性癖のダシとして使われてる感じが……。下着がどうとか短パンの隙間から見えちゃってるとか言おうとしたけどやめとこ……。
「俺が機嫌悪くて生意気な態度取ろうもんなら締め技ですよ。20回はタップしないと離してくんないっすね」
「離してくれないッ……はぁっ………」
あれっ。
あ、あれ……?おかしいな……何か余計ダメな気がする。姉貴の肌色話は避けたつもりなんだけど。アレか、先輩の頭ん中じゃもう姉貴はあられも無い姿なのか。もう今さら何言っても遅いって感じか。
「あの、まあそんなもんっすね。俺の前じゃキレッキレなだけ───」
「ブハッ……!」
「ちょッ……!?」
い、逝ったぁー!?
な、何で!?何でこのタイミングで鼻血ブーなの!?そんな性癖をくすぐるような───ッ……!? まさか先輩にМっ気がっ……!?そんな素振り今までに無かったやんっ!隠してたんか!?Мなの今まで隠してたんか!?頭ん中でうちの金剛力士どうなってんの!?
や、でも生徒会連中が姉貴に対して”好意持ってますよ”感を露骨に出さない感じ見てると全員ムッツリな気がすんな……轟先輩も
家
の近くまで待ち伏せてた割にそういう部分はオープンじゃない気がする……俺の前だけ?
「ば、ばえれふぁんがひへひゃほんなんなんへ……」
『楓さんが家じゃそんなんなんて』。多分そんなこと言いながらティッシュで鼻血拭ってる。あっちゃ〜、幻滅されちゃったかなスマン姉貴……ごめん嘘、これ幻滅した顔じゃねぇな……寧ろ喜んでね……?眼鏡の銀縁に鼻血付いて赤く光ってるし。
あの……荷物。ダンボール重いんすけど。
「すみません佐城君。ちょっとトイレ寄って良いですか」
「これ置いてからで良いっすか」
はよ運ばせろや。ダンボールの角張ったとこでチ○コ痛めなんだよ。こちとら興奮せずして前のめりなんだよ。頭ん中の女の弟の前で何言ってんのこの人。眼鏡キュッキュしろや。