Yumemiru Danshi wa Genjitsushugisha RAW - chapter (114)
生徒会室の鬼
白井さんのぽわぽわ爆弾発言で気まずくなった空気を何とか『呼び出し食らっちゃった』アピールで乗り越えた。芦田と
河井
が俺を白い目で見ながらバレー部の話を再開してくれたのには感謝の念しかない。白井さんってアレだよな………ファミレスとか入ったときに『あたしダイエット中なの〜』なんていう女子の前で『じゃあ私ジャンボパフェ!』とか悪意ゼロで言っちゃう系女子だよな。
よくつるむ友達が
岡本
っちゃんなのも解る気がする。こっちはこっちで『あたしダイエット中なの〜』とか言わずにスイーツがっついた後に体重計乗って『うぇ〜ん!』ってなる系女子だと思うから。いやコレ俺の
癖
入ってんな……。
「で?何の用?」
「どうも何も、夏休み前もやってたじゃん」
昼休み。飯食った後、生徒会室に行くと姉貴から以前とはまた違った書類を手渡される。やれという事らしい。さっきは助かったけど……この姉、俺から貴重な時間を奪うつもりか……!
「良いじゃん、どうせアンタ生徒会に入るんだし」
「いやいや何言ってんの?」
夏休み中にチラッと生徒会に入れと言われたのを思い出す。あれってマジだったの?いやだからって生徒会になんて入りたくないんだけど。この現状見てるだけでも超忙しそうじゃん。バイトをしてた今だからこそ思う、これで給料発生しないのがアホらしい。
「楓弟が入んのかー!面白いじゃん!」
「良いね。姉から弟に立場を引き継ぐって言うのも趣があると思うよ」
活発系イケメンこと
轟
先輩のガヤ。んでそんな轟先輩の書類を横から回収しながら優男系イケメンの
花輪
先輩が賛成の意を示した。示さなくて良いんだよベイビー。誰が好き好んでこんなめんどい組織に入るか。イケメン狙いの女子辺りで良いじゃねぇの。
「ほら、隣。何とか
拓人
の横座って
悠大
の持ってって」
「あ?た、拓人……?悠大?」
「甲斐拓人。悠大はそこの元気な奴よ」
「俺だよーん」
あ、甲斐先輩と轟先輩のことね。いきなり名前言われて判るかっつーの。姉貴ここに居る全員名前で呼んでんだな……てか轟先輩アンタ仕事する気無ぇだろ。全部花輪先輩がやってやってんじゃねぇか。俺を呼ぶくらいならやらせなさいよ。なに?盛り上げ役?
「轟先輩に任せたら不備が出ますから、もう良いんですよ」
「ええ………」
俺の気持ちを察したのか、秀才系イケメンこと
甲斐
先輩が眼鏡の位置を直しながら諭すように肩をポンとして来た。諦めろと言わんばかりの表情。むしろ諦めてんのは甲斐先輩の方か。姉貴じゃなくて轟先輩がマスコット的アレなんかな……。
「悪いな渉。俺からも礼はするから少し付き合ってくれないか?」
「………うす」
クール系イケメンこと生徒会長、属性盛り盛りの
結城
先輩から頭を下げられる。個人的にはこの人が甲斐先輩に次いでまともだ。そのくせイケメンとかどういうことなの神様………その座を女神夏川に明け渡せ。俺が教祖になってやる。
姉貴に助けられたのは確かだから甲斐先輩に教わりながら大人しく余ったノーパソを触る。ノーパソって
字面
思い浮かべるとアレに似てんな……何とは言わんけど。そう、邪念こそ俺の原動力。
「あ、すみません
楓
さん。コレ専用のフォーマットってどこにあります?」
「ああそれね。『文化祭』フォルダの4番目のファイルをコピーして使ってよ」
「はい、ありがとうございます」
甲斐先輩が何かを姉貴に訊いた。どうやら先輩も概要を知ってるだけで詳しい事はこれから知ってく感じみたいだ。てか話聞いた感じだと未着手のもん俺にさせようとしてない?ちょっと待ってそれもう完全に
俺の仕事
になっちゃうじゃん。勘弁してくれや。
「……え?手書きの内容をフォーマットに落とし込む……?手書きの時点でそれ出来なかったのかよ?」
「や、それ実行委員が外部からまとめてくれたやつだから。できない事はないんだけど、下手にパソコンとか使わせると支援者とか有志が敬遠して離れちゃうわけ。特に金持ってるご年配とか」
「”金持ってるご年配”って……んだよその尊敬してんのかしてねーのかよくわかんねぇ言い回し……」
「ふむ、宜しくお願いします。佐城くん」
「う、はい」
姉貴に文句を言おうとしたら顔に影つくった甲斐先輩に顔を近付けられた。『宜しくお願いします』がこれほど脅しに聴こえんのは初めてだな。久々のK4、侮り難し。
プリントを手に取るとパソコン内のファイルと同じ項目があった。ホントにそのまま書類をパソコンにデータとして落とし込むだけみたいだな。てかこの
束
学校関係者のやつじゃねぇんだな……色んなとこから金貰ってるって事か。ちょっと前の学校が
西校舎
の生徒を優遇してた気持ちも解る気がする。あっち側の生徒の家庭、有力者ばっからしいから。
「てか姉貴。今さらだけど俺らって”東側”───んぐッ!?」
「良いから手ぇ動かせ」
左隣の姉貴から頭ごと腕で締められた。ちょ、首から『ゴリッ』って今……!超痛いんだけど!
「……? 何の話です?」
「何でもないから。続き宜しく」
首を
擦
りながら手を進める。姉貴が俺を黙らせたのには訳が有りそうだ。大人しく黙って手ぇ動かすとすっか……。
集まったプリントは量こそ多いものの早いペースで減らす事ができた。やって分かった事だけど、特に有志は住所とか電話番号がラク。この学校の既卒者とか関係者みたいなもんだから去年のリストから名前見つけてコピペするだけで済んだ。
「そんなキツいわけじゃないんだな」
「いや昼に集められてるだけでキツいから。サービス残業みたいなもんだからねコレ」
「ハッ……!?」
「アンタ社畜根性あんじゃないの?だからこうしてアンタ
推
してんだけど」
「やめろよ……冗談じゃねぇ」
「楓、俺達も憂鬱になるから……”サービス残業”はやめてくれ」
マジかよ。マジかよ……。
ショック過ぎて2回繰り返してしまった。社畜根性とか屈辱なんだけどマジヤバめ。ちょっと結城先輩もげんなりしちゃってるし。おかしいな……?バイト代みたいに報酬出ないとやる気出ないなんてさっき思ってたんだけど。
「アンタ、さてはよっぽど懐が潤ってるみたいね……」
「ぁえッ!?ん、んなワケねぇだろ日頃あんだけ姉貴にパシられてんだぞ!?」
「バイトしてたアンタが仕事に対価求めないのがおかしい。金に余裕ある証拠だね。良い事知った……どっちかっつーと中学ん時のアレね………」
「おいマジで変な事考えんなよ!今まで以上に俺に奢らせんのやめろよな!」
「今までの分は良いのか……」
「ハッ……!?」
結城先輩がポソッと言った言葉が核爆弾級の破壊力だった。
社畜どころか奴隷根性が身に付いてる……だと?ヤバい体に力が入らない。一瞬にして
満身創痍
なんだけど。たぶん今俺真っ白に燃え尽きてるわ。何なのこの新学期出だし。俺やってけんの……?
「すまないな渉。礼として明日は俺がお前の分の昼を準備しよう」
「はい?えっ……?」
「昼になったら生徒会室に来てくれ」
「え……?」
色々と驚きが有るんだけどその前に一つ良いっすか。それまた仕事手伝わされる未来しか見えないんですけど?手料理ならせめて女子からが良い。いやだからって姉貴のとかじゃなくて……てか何この学校の生徒会。女子1人とかおかしいだろ学校側。
「あ、教室帰るついでにそこのダンボール資料室に宜しく」
「鬼なん?」
「とか言いつつ持ち上げに行くんだな……」
「ハッ……!?」
「ごめん、拓人もお願いできる?」
「はい、わかりました。任せてください」