When I was dying of a high fever, I was given the skill of hatching by the goddess, and for some reason I became the strongest tamer who can subdue phantom beasts and divine beasts. - chapter (42)
第42話 変貌を遂げたフェニ
「それで、兄さん。国家試験は無事終了したのですね?」
コップに入ったお茶を飲みながら、セリアは試験について確認してくる。
「まあ、何とかな」
セリアと久々に会った俺は、国家冒険者試験の内容に華を咲かせていた。
試験が終了してから数日、学校が休みの日になると、セリアがアパートを訪ねてきたのだ。
「ああ。セリアに事前に聞いていた通り、アカデミーの生徒が対抗してきてな。意識しないようにしてちゃんと護衛を務めてきたよ。お蔭で慌てずに済んで助かった。ありがとうな」
もし事前に聞いていなかったら動揺して減点行動を取ってしまっていたかもしれない。
「少しでもお役に立てたなら私も嬉しいです」
俺がお礼を言うと、セリアは嬉しそうに微笑んだ。
「兄さん、もう一つ聞いてもいいですか?」
「ん、何かな?」
セリアと俺の視線が同時に一点に向く。
「フェニちゃん、どうしてあんなにデ……太っているのでしょうか?」
『ピィ?』
ベッドの上に座っているフェニは、セリアに名前を呼ばれると、のそりと身体を起こし首を回してこちらを見た。
その身体は成長とらえるには難しく、横幅に広がっており、顔の周りにははっきりと肉がついている。
「それが……、俺が試験を受けている間、テイマーギルドで預かってもらっていたんだが……」
俺は苦い表情を浮かべると、その時あったことをセリアに話した。
「フェニ専用の部屋の居心地が良すぎたらしく、一切運動もせず、炎を浴び続けて食事と睡眠を繰り返してたらしいんだよ」
フェニは溶岩を水浴び代わりにし、炎の中にいるのが好きだったりする。
その上雑食なので、係員さんが餌を入れるといくらでも平らげ、運動もしなかったので、すっかり肥えてしまっていた。
「お蔭で、この部屋が狭くて仕方ないんだよな……」
フェニを抱いて寝るのは至福のひと時なのだが、今のフェニではベッドの四分の一のスペースを取ってしまうので一緒に寝ることができない。
「モンスターのことはあまりわかりませんけど、明らかに健康に悪そうですよ?」
セリアはフェニに心配そうな視線を送る。
「ああ、だから、これからフェニを連れて外に出ようと思うんだが、付いてくるか?」
「ええ、お邪魔でなければ是非」
『…………#!』
『ピィ?』
俺とセリアとパープルの視線を受けたフェニはつぶらな瞳で首を傾げるのだった。
「ほら、フェニ。もっと速く走るんだ!」
『ピッピッピィーーーーン!』
王都にある王立公園にて、俺はフェニと一緒に走っていた。
天気が良く、暖かいので、俺たちの他にも公園に遊びに来た人たちがちらほらといて、こちらに注目していた。
『ピフッ、ピフッ、ピフゥ』
少し走ったところで、フェニが息を切らしている。体重が増えたせいで、空を飛ぶこともできずとても苦しそうに見える。
「フェニちゃん、頑張ってー!」
少し離れた芝生にいるセリアががフェニにエールを送る。肩にはパープルが乗っており、美味しそうにセリアが作ったクッキーを齧っていた。
『……ピィ~~』
そんなパープルを見て、フェニはクチバシから涎を垂らしていた。
「言っておくが、しばらくは食事制限だからな?」
『ピエン!?』
フェニは驚くと、悲しそうな瞳を俺に向けてきた。
「そんな目をしても駄目なものは駄目だぞ!」
俺は心を鬼にしてフェニに告げる。
『ピィ……ピィ』
すると、フェニはターゲットを変えるとセリアの足元まで行き、彼女の膝をツンツンと突いた。
顔を上げ、期待の眼差しでセリアを見るフェニだが……。
「クッキーならまた作ってきますから。今は頑張りましょうね?」
セリアは苦笑いを浮かべると、フェニの頭を撫でた。
『ピエピエーーン』
首を横に振り、いやいやと主張するフェニ。
「どうしましょう、兄さん。可哀想になってきてしまいました……」
「それは俺もそうだ。罪悪感で胸が痛い」
俺もセリアも、何もフェニを虐めたいわけではない。ただ、このまま肥満が進むと、良くない病気になったり、動きに精細さがなくなってモンスターとの戦闘で不覚をとったりしかねないのだ。
「ごめんな、フェニ。でも、お前のためだからさ」
俺がフェニの頭を撫でると、フェニはじっと俺を見つめる。
俺の感情がフェニに伝わり、フェニからも感情が伝わってきた。
『ピッ!』
フェニは翼を上げると「わかった」とばかりに返事をする。瞳には炎が宿っており、やる気をみなぎらせていた。
「いいぞ、その意気だ!」
それから、フェニが痩せるまでの間、公園でのジョギングが俺の日課に追加されるのだった……。